こわしてしまったようなきがする



どこから
またつなげればいいか
わからなかった



おとなになれば
わかるのかな









『グラスハート3』










すごく聞き覚えのあるイヤな音がして、
オレ、田島は昼休みの転寝から目が覚ました。
「7組だ!」という誰かの声に、教室を飛び出す。










駆けつけた7組の廊下には立ち尽くしているクラスメイト数人。
やべー、こいつら昼休みにオニごっこしてたんだっけ。
うち2人は突っ込んでガラスを浴びたらしく
あちこちに傷を作って呆然としている。
血は出てたけど、それっくらいで良かった。
「危ねーからついてるガラス落とせよっ」
そう声をかける。
中からは女子の小さな悲鳴が聞こえていた。
ここはともかく…中はどうなってんの?





「阿部!!」
聞こえた花井の声に教室の中を割れた窓に視線を向ける。
何?中でケガしてんの阿部なの?
その窓に近づくと固まってしまっている花井の顔が見えた。
瞬間胸が熱くなり、オレは叫んでいた。
「花井っ!!」





窓越しに目が合った。
花井のその顔を睨め付ける。
「花井…お前、動けよ!何ぼーっとしてんだよ!
ケガしてんの阿部だけじゃねーんだよ!」
お前主将だろ?
代議員も2学期にまたなったって言ってたよな?
何こんなトコで動けないでいんだよ。
そんなのオレの知ってる花井じゃねーよ。





花井は首を振り立ち上がる。
こちらを向いて声を張り上げた。
「7組以外で関係のないヤツは、ここから離れてくれ!
ケガしてるヤツ、そっち何人いる!?こっちは阿部だけだ」
オレは答えた。
「こっち2人!2人とも9組!たいしたことない!!」
ちゃんと聞こえただろうか。
「田島くんっ」
篠岡からタオルを数枚渡される。さすがしのーか、気が利く!
「しのーか!ありがとっ」





「田島ァ…なんか血ィ止まんねェよ」
「こんくらいで済んでよかったんだよ」
弱音吐いてるヤツにそう言ってガラスの破片をはずしていく。
筋になって流れる血を拭いていく。
阿部の状態はどうなんだろう。







「来んな!!三橋!」








阿部が叫ぶ声に廊下側のざわめきが増した。
「危ねェから近寄んな!!水谷!そいつこっちに近寄らせんなっ」
そうだ、昼休みだもんな、三橋が7組いたんだ。
水谷だけで大丈夫かなと思ったときに、
泉が足元のガラスを踏みまくって駆け抜けていった。
「三橋はこっちまかせろ!」
「おう」
よし、泉来た。
浜田がいないのが気にかかったが、まあ三橋は大丈夫だろ。
「三橋、ダメだよ!危ないよ!」
「やだ」
「やだじゃなくて!」
「やだぁっ!阿部君っ!!」
水谷と三橋の声が聞こえる。
三橋のことを思うとスゲー辛くなってきた。







その後、三橋は気を失っちゃったみたいで
水谷が背負って、泉もついて保健室まで運ぶようだった。
その後すぐに先生達がやってきて、校医先生のトコにいくことになった。
阿部について花井も来るというのでしぶっていたオレだが
結局のところ押し切られてしまった。













「後で話がある」と花井は言う。
そっちの事情を聞かせろというのだけど…。















なあ花井。





まださ。
野球してないトコでお前といると
一緒にいて幸せな気分になると、その分、
胸が痛くてたまんないんだけど。
あんまり痛くて痛くて
オレはお前から逃げてしまっているんだけど。




そんなことお前。
全然分かんないんだろうな。

















どうしてなんだろう。






誰か答えをくんないかな。



勉強みたいに難しい。
いくら考えても分かんない。
















どうしてなんだろう。






傍にいたいと思うのに
いざ傍にいると辛いのだなんて。














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