『ホワイトデー』








今日は3月14日、ホワイトデーの1年7組。
本来ならばバレンタインデーに
もらったチョコのお返しをする日のはずなのだが
最近はどうも違うようで…。





お昼休みに教室で
水谷が机の上にざーっとたくさんの小さなお菓子をばらまいた。
「うお、水谷どしたこれ」
花井が目を丸くして、問うてきた。
「んー、姉貴からたっくさんもらったんだよ。
クッキーやマシュマロやアメが美味しそうだったから
みんなで分けようと思って持ってきた。
女子は女子だけでバレンタインデーも友チョコで
今日は今日ですっごく盛り上がってるんだからさ。
オレらも少しはいいよな?」
「…少しもらってもいいか?9組に持って行きてェんだけど」
「いいよー、田島たち喜びそうだよね」
「ありがとな」
掌いっぱいのお菓子を抱えて、花井は教室を出て行く。




「おーい」水谷は後ろの席の阿部に声をかけた。
机に突っ伏してるところ、その頭をつんつんと突付く。
かわいい個包装のクッキーをひとつ差し出す。
「阿部もお菓子どう?」
「…イラネ」
3文字ですまされてしまった。よっぽど眠いようだ。




「水谷、それ女子に少しわけてもいい?」
「フミキくーん、お菓子ちょうだい!」
7組の男子も女子もわらわらと寄ってきて、気が付くと
お菓子は水谷の片手の分ぐらいしか残ってなかった。
さてこれをどうしよう…と思っていると、
廊下を三橋が通るのが見えた。




「三橋ーっ」
声をかけるとにっこり笑って
教室に三橋は入り、こちらに近づいてくる。
「お菓子どうぞ♪全部あげるよ」
そう言って手から手へ渡すと三橋の笑顔がよりいっそう輝いた。
「あ ありが、と」
「分けたいやつがいたら分けてもいいんだぞ。
バレンタインデーにお菓子わけてもらったりしたんじゃないのか?
お返ししてもいいからな」
ぶんぶんと首をたてに振って、三橋はそのまま阿部のほうを向いた。
「あべ…くんっ」
阿部が突っ伏していた寝ぼけ顔を上げる。
その阿部に向かって、
三橋は持っていた中からひとつクッキーをとって差し出した。
「はい」
「お、ありがと」
阿部は笑顔を見せてそれを受け取る。
とてもうれしそうな三橋の顔を見て、水谷もうれしかったが
その一方でちょっと待て、と思っていた。




「阿部よ」と、三橋が帰った後水谷は阿部に声をかける。
「何だよ」と、突っ伏したままで後ろの席から声が返ってくる。
「お前オレからのクッキーは受け取んねーで、
三橋のは受け取んのかよ」
「そうだよ」4文字で話を終わらせて
阿部はまたすーすーと眠ってしまった。



はぁぁと大きなため息をついて、
窓の外を水谷は見上げる。



今日は3月14日、ホワイトデー。
もうすぐ春だというのに
冬が舞い戻ってきたかのように
外には雪が舞っていた。






今日も、きっと明日も1年7組は…平和?















青空シリーズのパロディです♪




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