月篠あおい Side





今日が最初のいろは 24
「う」



『内側』










冬が来ていた。
12月になってしまっていた。




生徒会室のドアを開けても
嘗てここにいたはずの人間はいなくて。
さみしくなって、ドアを黙って閉めた。
笑顔の残像だけが、それでも見えたような気がした。




次の日にまたドアを開けたら
嘗てここにいたはずの人間とは違う新しい住人がいて
何故かここは自分の居場所じゃないのだと
そう感じてしまって、ドアを黙って閉めてしまった。
「……田島先生?」
新しい生徒会長が自分の名を呼ぶけれども。




この部屋の内側に
大事なものが今まで
当たり前のようにあったはずなのに。









田島にとっても
終わってしまったものは、
時間とともに失くしたものは、大きかったのだ。

















いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ  つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせすん






2007/1/1 UP





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