月篠あおい Side





今日が最初のいろは 10
「ぬ」



『糠星』










空にはあんなに無数に小さな星があるのに
オレ、水谷にとっての
ラッキースターはひとつだけなんだ。





学校を出たのは、もう夜も更けてからだった。
「たっくさんの星、ちっさーいっ」
「糠星だね」
栄口先生の、担当教科は国語だからいろんな言葉を知っている。
笑顔はとても爽やかで、光って輝いて見えるんだ。
「いちばんひかりかがやいてるのは、きみだよ」
大好きな横顔にオレは言葉を投げてみる。





本気だけど、
ほんとにそう思っているけれど、
絶対に冗談に聞こえるように。





気持ち抑えられなくて、とうとう言ってしまった
『すきだよ』の言葉さえも。
冗談に思えるように。













いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ  つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせすん






2006/8/18 UP





back