妖一くんとまもりちゃんのお話 その1
『名まえを呼びたい』








「鈴音ちゃんは、あなたのこと『妖一兄(よーにい)』って呼んでるのよね」
「だからどーした糞マネ」
「わたしも『妖一くん』って呼んでいい?」
部室のテーブルで頬杖をつきながら彼女はにっこりと笑顔でそう云った。
彼の噛んでいた無糖ガムの風船ががふんと割れる。
「…テメーとち狂ったんじゃねぇか?!大丈夫か?」
「『妖くん』のほうがいいかなぁ?」
彼女の視線は彼には向かわず、ふわりふわりと彷徨っている。
「ヤメロ!何考えてんだ!」





がたりと椅子の音をたてて、彼女は立ち上がった。
テーブルに足をどかんと投げ出して座っている彼の傍に近寄ると
困惑しているつり上がった目をじじじと見て
頬に小さなキスをちゅ、と落とした。
「ヤキモチくらい焼かせて頂戴」
彼は言葉を失って、ぐぅと唸った。








この2人はどうやらお付き合いしているようですね(笑)





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