彼と彼女 2
『雨の窓際』









「視界に入っていても見えてないものって
その実たくさんあったりするような気がするわ」
彼女はそう言って教室の窓から雨の降る、
その世界の様を見ていた。
「確かにそうかもしれねぇな」と彼も言葉を返す。



「テメーには見えてないものが多すぎる」



更に彼がそう言葉を足しても、
彼女はいつものように怒っては見せなかった。
「確かにそうかもね」
少し寂しげな笑顔でそれだけの言葉を返した。



新緑の時期は太陽の光の眩しさだけに気を取られて、
気がつくと過ぎてしまっていた。

もっとちゃんといろいろなものを見ておけばよかったのだと、
彼女は折折に後悔している。
気が付かないで視線の先をただ通り過ぎていくものがなんと多いのだろう。
彼の気持ちも、どのくらい自分には見えていたのだろうか。



雨の窓際で彼女は、降る雨のフィルター越しに世界を見る。
彼は黙ったままで彼女の傍に居た。








この窓を開ければ、雨の影響を受けすぎている大気の感触に触れ、
違うものがまた見えるのだろうか。



彼女は、窓に向かって手を伸ばした。








雨の降る、その季節に。










2007/7/9 サイトUP




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