妖一くんとまもりちゃんのお話 その17
『寒い日に』









雪が降る寒い日に
手を繋いで歩いた。


彼の細くて長い大好きな指に
彼女は自分の指を絡ませて。


陽はとうに落ちていて
恥ずかしさを闇に紛れ込ませて繋いだ手。




「すごくすごくうれしいわ」
「…そりゃ、良かったな」
「あなたはうれしくないの?」
「テメーのその間抜けな顔を見てると楽しいぞ」
「もうっ、何よ!」




彼も彼女も、お互いが喜ぶ顔を見たかった。
だから満足だった。


まるで子どものように、2人は手を前後に振って歩いた。




「まもり」
「なあに、ヒル魔くん」
「…いや、何でもねぇ」
「あらなあに、変な人ねぇ。そんなこと知ってたけど」
「!…テメーが変な人言うんじゃねぇ!」
「わたしは変でもなんでもないわよ」
「俺と付き合ってる時点で変じゃないのか」
「何それ」




立ち止まって、もう片方の手も繋いで、彼女は彼を見つめた。
雪は静かに落ちているけれども、
その優しさで2人の視線を切り落とさない。




「もしかしたら信じてないのかもしれないけれど
わたし、ヒル魔くんといて幸せよ?」
「……そうなのか?」
「何不安になってんの。あなたらしくもない」
「テメーはな……、そういうトコロがな…」




彼の舌打ちの音は夜の闇が吸ってしまって、すぐに消えた。
しばらくはそのまま見つめ合っていて、
いくらかの時間は過ぎ去って、やがて2人は歩き出す。




手は繋いだままで。



寒い日に。







この2人のお話はここで一区切り。




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