11月24日は、姉崎まもりの誕生日。
お誕生日おめでとう。


妖一くんとまもりちゃんのお話 その15
『お誕生日にはシュークリーム』









「さあ、まも姐!座って座って!」
誕生日の日、放課後のアメフト部室で。
鈴音に声をかけられて、姉崎まもりは部室の丸イスに腰をかける。
目の前にはデビルバッツの面々が勢ぞろいで、
まもりのほうを見ていて、なんだか緊張してしまった。
ヒル魔は部室のカウンターの奥で、ノートパソコンを扱っている。




お誕生日プレゼントをもらえるのかな?




セナからは、朝一番に「おめでとう」の言葉をもらい、
且つ「プレゼントは放課後部室でね!」と宣言されていたので
期待に胸が膨らんでいる。



どきどきを抱えて待っていたら、
目の前に大きな大きなお皿が1枚置かれた。
「??」



「お誕生日おめでとう、まもり姉ちゃん」
セナがそう言って、お皿の上に3つばかり、
まもりが愛してやまない雁屋のシュークリームを置いた。
「うわあ、ありがとう、セナ」




セナだけではなかった。
デビルバッツのみんながそれぞれお祝いの言葉を言って
いくつものシュークリームを目の前のお皿に積み上げていく。
高く高く積み上げられていく大好きなもの。
すごくうれしくなってしまった。
「うれしい。ありがとう。これで飾りをつけたら
まるでシュークリームで作ったクリスマスツリーみたい」
うれしさのあまりそう言ったら、鈴音からすぐに言葉を投げられた。
「違う違う、まも姐、違うよ」
「え?」
「クロカンブッシュ…って知ってる?」
鈴音が言っている言葉の意味がわかった途端、
顔全体に熱が上がってきて、まもりはその顔を真っ赤にしてしまった。





フランスで定番のウェディングケーキに
「クロカンブッシュウェディングケーキ」というものがある。
シュークリームを高く積み重ねて、表面を飴やカラメルで固めているもので
たまに見かけることがある。
ここまで大きなシュークリームは使わないけど。





ま、まさか…と、まもりは思い至ることがあり、
慌てて部室の奥のヒル魔の姿を探した。
……見当たらない。





「あっ、新郎逃げやがった!!」
ヒル魔がいないのに気が付いた十文字が声をあげる。
「えーっ、これから結婚式なのに!」
鈴音の声が高く響いて、…やっぱりと思う。
おいおいと、思う。
「探せ!つれて来い!」
「了解っ」
「奥にいたのに、どっから外に出たんだ!」
「まもりさん置いて逃げるとは!」
「アリエナーイ!」
「逃がさねーっすよっ」
「よし、ちょっくら掴まえに行こうぜ!」
「めんどくさいなあ」
「フゴー!」
「…ははは」
「そりゃ了承とってないんだ。逃げるだろうあのバカヤローは」
「気持ちわからなくは…ないけど…」
「逃げるとは意外だったなあ」
「とにかく探そうよ!シュークリーム早くみんなで食べようよ」
「いってらっしゃーいっ」
次々に上がる声に部室内は騒然とし、
わらわらとヒル魔を探しに外へ出て行く。





「…ごめんね、まも姐。遊んじゃって…」
鈴音が項垂れつつ謝ってくる。
「どうして謝るの?みんなからお祝いしてもらって
最高にうれしい誕生日だわ。ありがとう」
そう言って、シュークリームのウェディングケーキもどきを見上げる。
見上げて…笑い出してしまった。
いつのまに…と、まもりは思う。













天辺のシュークリームには
包み紙を剥がした無糖のガムがひとつ、突き刺さっていた。



















「結婚式のまねごとなんてやってられっか。
やるときゃ、本物だ」
(ヒル魔組組長談)



このシリーズだけは、何でもありです(笑)
(マリアシリーズの反動か?)
果たしてちゃんと全員いるか?(あやしい…)


兎にも角にも
まもりちゃん、お誕生日おめでとう!!





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