妖一くんとまもりちゃんのお話 その14
『探すのは月の光』









夜の世界に広がる穏やかな月の光が
自分に向けられる感情に
ひどく似ている気がするのは、どうしてだろうか。





探すのは、月の光。
月そのものではなく。







「探さなくてもいいのよね」
帰り道、歩きながら宙(そら)を見上げてまもりは呟く。
「何言ってやがんだ」
横で、ヒル魔は膨らました無糖ガムを
がふんと割りながら、まもりを見つめる。
「月は必ずあるのよ。見えないだけで」
「…大丈夫か、糞マネ」
ヒル魔は怪訝そうな表情をしている。





「ヒル魔くん、言ってる意味わかんない?」
「わかんねえな」
「探さなくったって、あなたがわたしを好きだって気持ちは
いつでも感じてるわよってこと。わかる?」
「……」
まもりは、ヒル魔に向かってにっこりと笑った。
ヒル魔は何の反応も返さず、それがまもりには逆にうれしかった。
否定の言葉が返ってこないときは、肯定しているということなのだ。
「テメーはいつでもびっくり箱だ。もういい加減慣れたけどな」
そう言葉はまもりに向かって投げられて、
それが本当に本当にうれしかった。






月の姿を視界の中に捉えなくても
闇だけではない宙(そら)の微妙な明るさに
その存在を感じることができる。




光あれ。
光あれ。




それは大事な光。
掛け替えのない、光のはずなのだ。











いつでも月は
世界に存在しているはずなのだ。




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