妖一くんとまもりちゃんのお話 その11
『七夕』









「もうすぐ七夕ね。7月7日は晴れるといいな」
梅雨の晴れ間で青空が綺麗だった日。
一応は彼氏であるヒル魔くんとの部活後の帰り道、
星が出ている夜空を見上げて、わたし、姉崎まもりは言った。
ちょっとだけロマンチックな気分になっていた。



「糞マネ」
「なによ」
「まさか織姫と彦星が、自分と俺だと思ってんじゃねーだろーな?」
「え?…あ、あら、そんなことちょっとぐらいしか、思ってないわよ」
ダメだ。
これじゃばればれじゃないの、と焦る。
「別にいいけどな」
ケケケと笑うヒル魔くんに白々とした視線を向ける。
その笑い方がちょっとだけ心の何処かにひっかかっていた。
「なにがいいの。言ってみなさいよ」
「1年に1度しか逢えないんだぞ。
テメーがそれでいいんなら、俺は別に構わねぇけどな」
「ええ?いいわけないじゃないの!」
口をぱくぱくと動かして狼狽えるわたしを見て、
ヒル魔くんはそれはもう、うれしそうに笑っている。
「糞織姫と呼んでやる」
そう言って、ずっと笑っていた。
…意地悪っ。





今はまだ毎日会えるから、
1年に1度しか逢えないなんて、と思うのかもしれないけれど。
もしも、ずっとヒル魔くんと逢えなくなる日が、
もしも、遠くない将来にそんな日が来てしまったら、
織姫と彦星のように、例え1年に1度だけでもいい、
逢いたいと切実に願うのかもしれない。





『ずっと傍に居させて』
そう願ってもいいかなぁ?













最近この2人は仲良しさんだなぁ…(笑)




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