妖一くんとまもりちゃんのお話 その5
『バレンタインデー』









雪が降っていた。
風も強かった。
まるで吹雪のように、
雪は流れて
風も流れて
泥門高校のあちこちを
揺らしつづけていた。



今日はバレンタインデー。





「チョコじゃねぇとダメなのか。
そもそも甘いモンじゃねぇとだめなのか」
ヒル魔くんは当日になってそんなことを言う。
バレンタインデーにチョコを貰うのが
嫌だとぬかすこの男の脳髄を
外の風でちょっと揺らしてやりたいと
思う姉崎まもりだった。





誰も食べろとは言ってない。
一応お付き合いしているのだし、
チョコをあげたいという女の気持ちも
少しは分かれと思うのだ。





「大体バレンタインデーってのは何をする日だ?」
疑問符つきで投げかけてくる。
「わたしに、答えさせようというの?」
「分かんねーのか?」
「それくらい分かるわよ!」
ムキになって言い返すとケケケと悪魔が笑う。



「女性が男性に愛の告白をする日…だと思ったけど?
違うのかしら?」
そう言うとこの男は楽しそうに楽しそうに笑った。
「ケケケ、ならチョコなんかいらねぇじゃねーか。
素直に言葉にすればいい」





わたしは押し黙る。
次に口を開くのを待っている。



「テメーの言葉なら聞いてやる」





口を歪めて笑うこの男の言葉に
それはずるい、と思った。















この2人はほんとに変だな…。
マリアシリーズの2人で同じ話を書くと
まったく違った話が書けそうですね(笑)





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