妖一くんとまもりちゃんのお話 その3
『ヒル魔組』








「ちょっとちょっとまも姐」
ある日の放課後、鈴音ちゃんが
部室の隅でわたしにこっそり訊いた。
「ねぇ、面白い噂を耳にしたんだけど」
「どんな噂?」
心当たりがなかったので笑顔で問うた。





鈴音ちゃんは一拍おいて口を開いた。
「アメフト部、最近陰で『ヒル魔組』って呼ばれてるってホント?
組長が妖一兄(よーにい)で、極妻がまも姐だって」



なんですって〜!
顔に浮かべたはずの笑顔が引きつる。
どこからそんな根も葉もなかったり
(ちょっとだけあったり?)
…するかもしれない噂が!



ヒル魔くんの組長は似合いすぎるけど…。



でも極道の妻は、夫の不審な言動に怒鳴りたくても
若い衆の前では冷静でいなければならない…らしい。



怒鳴ってばかりいるわたしは
まだまだなのかもしれない。





「さっき妖一兄(よーにい)にその噂のこと話したら
すっごくウケてたよ」
鈴音ちゃんは笑顔でそう言う。
背中をぞぞぞと走る悪寒。





「よお、糞極妻!」
そう明るく言いながら、
ヒル魔くんが部室のドアを開け
こちらに向かってやってくる。





ああ、怒鳴りたい。



どの口が、

それを言うか。
















娘に大ウケした小話です。





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