夢に向かうためのそれは約束で








約束








夢ではなく、約束だと彼は言ったのだ。
だからフィールドへ戻るのだと。






「出るしかねえんだ。だから何も言うんじゃねえぞ」
救護室を出る時に更に落とされた言葉に、わたしは小さく笑むことしかできない。
ヒル魔くんが使った切り札は脆く、
それを強要するのはわたしに対する甘えなのだと分かって、涙が出そうになる。
甘えられるのがうれしいなんて、この状況で我侭にも程がある。



約束通り、従順に働いてあげる。
想像できる右腕の激痛にも平気な顔を装っている、
そんなあなたの姿を最後まで見守ってあげる。










約束は、果たさなければならない。



戻っても、ヘルメットですら自分では着けることができなくて、
銃ももちろん持つことはできないほどのダメージを受けている。
それでも、約束だから戻るのだとヒル魔くんは言い、実際にそうした。
切り札を出して、わたし、姉崎まもりの口を封じて、
仲間が待つ、このフィールドへ。



ヒル魔くんの再登場で、詰まりつつあった戦況に風穴が開いていく。
満身創痍のその姿を誰もが分かっていながら、留まる事は無く、
残り時間はゼロになっても、その先へと進む。





運命のラストプレーに、誰も彼もが夢への一瞬を刻んでいく。
その積み重ねがクリスマスボウルに届くのだ。




ほら、ヒル魔くん、聞こえる?
わたしたちが存在するこの世界に歓声が降っている。
泣かないで、笑うの。
皆で笑うの。













どんな激闘にも必ず終わりの時が来る。


夢は、皆で叶えたのだ。


















前作「切り札」から、この部分を切り離していたので、
(テーマ的な理由でした)
短いですが今回UPです。
クリスマスボウル出場、おめでとう!


マリアシリーズの終わりは見えてきたけれど、
まだしばらくは続きます。







2011/5/29 UP


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