初めに灯(あかり)があった


わたしたちは皆
その灯を見てきたはずだった









まだついているはずの灯












青ざめているだろう顔色も、
小さく震える手足もその時のわたし、姉崎まもりは自覚していなかった。



「まも姐っ!!」
泣きながら飛びついてきた鈴音ちゃんの小さな身体を抱き止めつつ、
フィールドをただ見つめ、立ち尽くしたままだった。





ヒル魔くんが、倒れている。












白秋ダイナソーズ戦で、蛾王くんの力はヒル魔くんの右腕を直撃した。

「右腕が折れてやがる」と言うどぶろく先生の声が、
わたしの鼓膜を鈍い痛みと共に揺らす。
鈴音ちゃんをどぶろく先生に預けて、
ヒル魔くんが乗せられた担架に駆け寄った。
彼は倒れてもまだ戦いを続けているはずだ。
どんなメッセージも逃したくない。



ヒル魔くんがずっと見続けていた灯は、
最初はほんの小さな点のような光だったのかもしれない。
けれど泥門デビルバッツの仲間が増えていく度に、
それは一条に広がり、夢への道を照らしてきたはずだ。
灯は皆にも見えている。
夢へ向かって皆で駆けて来た。
ならば絶対にここで消すわけにはいかない。



動けない身体でそれでも何か言おうとし、
微かに動く指でわたしに向かって言葉を紡ぐ。
目は逸らさない。
わたしはヒル魔くんのすべてを見つめていくのだ。














神には何も願わない。
現実はここにある、わたしの目の前に。





ヒル魔くんは、倒れている。



















2010/2/25 UP


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