手を引いてやる
だから











マリアマリア












姉崎まもり。





昔は。



小うるさい奴だと思っていた。
何かする度に俺、ヒル魔に
うるさく口を出してきて。
まだ今より髪も短くて
風紀委員サマサマで。



アメフト部にマネージャーとして
引き入れたのが、春で。
糞チビを守り
奴にたいして優しい顔を向ける。



まるで聖母マリアのように。









まるで聖母マリアのように。
悪魔に向かって、優しく笑う。




この俺に向かって笑うのだ。






誰にでも向けられる笑顔なんかいらねぇ。
そう思っていた、春と夏。






季節は巡り巡って
秋も深まっていって。
そういえば。














そういえば、
泣いた顔は1度も見たことがなかった。














「勝手だなぁ、わたし」



聖母が独りで泣いている。
しかも
泣きながら笑顔を見せている。



盤戸戦は、始まろうとしていた。






















独りで。
泣いてんじゃねぇ。




テメーが産み落とした俊足のキリストは
自分の力で人生の道を歩いていくのだ。





いつまでもどこまでも聖母でいてもいいが
俺は神なんか信じてねぇ。












手を引いてやる。
だから。
このまま地獄まで堕ちて来い。





その聖母のような
笑みは絶やさぬままで。










マリアマリア。
アヴェ・マリア。



















マリアシリーズ最初の話である
『Ave Maria』と呼応している話です。
考えたのは次の『呼び合う』と併せて冬でした。
やっとやっと、ここまで来ました。



でもって…
21巻の「187th down アヴェ・マリア」には
うわあやられた。まいっちゃったよ、と。
もちろん元ネタは知っていましたが(笑)
アイシにはまった頃、普通のアメフトサイトさまにも
かなり通いましたので(笑)







2006/6/16 UP


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