たたたん、と音がする
たたたた、たたたん











踊る指










打楽器から奏でられているかのような音が
キーボード上から響いている。
指の動きは軽やかで
視線を外すことができずに見つめ続けていた。





わたし、姉崎まもりはヒル魔くんの
ノートパソコンを操るその動きを見て
目の前に両手を広げ指を動かすけれど
思ったようには動いてくれない。



木々が色づいてきて秋も深まる、
いつもの部室で。
練習も終わり皆が帰った後の僅かな時間、
ヒル魔くんはノートパソコンをいじっていて
わたしは領収書の整理をしていた。






「いくらなんでも指1本はありえねーだろ」
「……」
「テメー中学高校と『情報』の時間何やってたんだ」
「……」
わたしはパソコンのキーボードを
まだ両手1本ずつの指でしか扱えないアナログな人間だった。
事実なので反論もできず、
かといってヒル魔くんに謝るのも変なので
そのまま黙り込む。
「ケケケ、苦手なのはお絵かきだけだと思っていたがな」
「…だって確実じゃない」
「何が」
「1本ずつだったら間違えないわ」
ケケケケケと背を反らしてヒル魔くんは笑う。
「うちのページくらいちゃんと出せないと困るぞ」
「もう失礼ね。アドレスは覚えてるし、
掲示板にも書き込んでたりするじゃない」
「掲示板は携帯からだろ」
「あら…ばれてたの」
「何でもお見通しなんだよ、テメーのことは」
言われて頬が赤くなる。
本当に何でもお見通しであるのなら
この胸にじん、とくる感覚も
ばれてしまっているのかしら。
もしかすると。





ヒル魔くんの長い指は
それはそれは軽やかに
キーボードの上を踊っている。



たたたん、と音がする。



わたしは領収書の束を
テーブルの少し向こうに押しやって
目を閉じて踊る指の音に聞き入っていた。










その指の温もりを
わたしは知っている。



指を重ねて
わたしはそれを知っている。







彼が

ほんとうは


優しい人だということも
















まもりちゃん側も少し
動きを見せてきました。

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掲示板は楽しかったです。





2006/1/21 UP




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